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プレコンセプションケアとは?性教育授業での取り入れ方を紹介
投稿者 : on

近年、医療や教育の分野で注目されている言葉に「プレコンセプションケア」があります。これは妊娠を希望する前の段階から、自分自身の体や心の健康を整えることを指し、世界保健機関(WHO)や厚生労働省も推進しています。 妊娠や出産について考えるのは大人になってからが多いかもしれませんが、実はプレコンセプションケアの考え方は中高生など若い世代から知っておくことが大切です。なぜなら、生活習慣や性に関する知識は、妊娠するかどうかに関係なく、早いうちから身につけることで将来の健康に大きく影響するからです。 今回は、プレコンセプションケアの基本と、性教育に携わる方が若者向けにどのように授業で伝えられるかについてご紹介します。 プレコンセプションケアが注目される理由 プレコンセプションケアの目的は、「健康な妊娠・出産の実現」だけではありません。将来的に妊娠を望むかどうかに関わらず、自分の体を大切にする生活習慣を身につけることに意味があります。 たとえば、以下のような生活習慣は、将来の妊娠だけでなく、生涯の健康にも直結します。 これらは大人だけでなく、中高生が日常生活で意識できるポイントでもあります。だからこそ、「プレコンセプションケア=妊活のための知識」ではなく、「生き方・健康の土台づくり」として伝えることが重要です。 性教育にプレコンセプションケアを取り入れる意義 従来の性教育は、「避妊」や「性感染症の予防」といったリスク回避に焦点が当たることが多くありました。もちろんそれも大切ですが、それに加えてプレコンセプションケアの観点を取り入れることで、より前向きな学びにつながります。 性教育にプレコンセプションケアを取り入れると、以下のようなメリットがあります。 ①「将来の自分」を考えるきっかけになる 「今の生活習慣が未来の健康につながる」と伝えることで、自分の体を大切にする意識を育てられます。 ②性と健康を切り離さず学べる 「性は恥ずかしいこと」「隠すべきこと」ではなく、体や心の健康の一部として理解できるようになります。 ③男女ともに関わるテーマとして伝えられる 妊娠は女性だけの問題ではありません。男性にとっても生活習慣や精子の健康は重要であることを伝えることで、性別に関係なく学べます。 授業でできるプレコンセプションケアの取り入れ方 では、実際に子どもたちへどう授業で伝えると良いのでしょうか。ここでは具体的な活動アイデアをご紹介します。 1. 「未来の自分」を描くワーク 生徒に「10年後の自分」をイメージしてもらい、どんな生活をしているかを書き出します。その中で「健康でいるために今からできること」を考えてもらうと、生活習慣と未来のつながりを実感しやすいです。 2. 生活習慣チェックシート 睡眠時間、食習慣、運動、スマホ使用時間などをセルフチェックするシートを配布し、「自分の生活を整えることが未来の健康につながる」ことを学びます。 3. 性感染症と妊娠の正しい知識を学ぶ 避妊法や性感染症の知識はプレコンセプションケアの基本です。正しい情報を知ることで「自分や相手を守ることは未来を守ること」と理解できます。 4. 男女一緒に学ぶ時間をつくる プレコンセプションケアは性別に関わらず学ぶ必要があるテーマです。共に学ぶことで「相手の立場を理解する」視点も育ちます。 5. 栄養・運動・メンタルを総合的に扱う 例えば、「将来の赤ちゃんの健康は母体の栄養状態に影響する」と伝えると同時に、「運動やストレス管理は男性の精子の質にも影響する」ことを紹介するなど、男女双方に具体的なイメージを持たせます。 若者に伝えたい大切なメッセージ プレコンセプションケアを性教育に取り入れるときに大切なのは、「妊娠を前提としない」ことです。 「結婚するかどうか」「子どもを持つかどうか」は個人の自由であり、多様な生き方があります。 しかし、どんな生き方を選んでも、自分の体と心を大切にすることは全員に共通するテーマです。 そのうえで「自分の未来の選択肢を広げるための知識」として、プレコンセプションケアを伝えることが、性教育の新しい価値になります。 未来を生きる子どもたちが「自分の体を大切にしながら、選択肢を広げていけるように」そのためにプレコンセプションケアの視点を取り入れた性教育は、これからますます重要になっていくでしょう。