【活用事例】ふれあいの12段階を活用したワーク

【活用事例】ふれあいの12段階を活用したワーク

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今回はwithセイシルで提供している「ふれあいの12段階」の画像を活用したワークを紹介します!

ふれあいの12段階とは?

「ふれあいの12段階」とは、イギリスの動物学者デズモンド・モリスが唱えた考え方のことです。恋人同士がどんな過程を経て親密になるかを12段階に分けて示しています。

ふれあいの12段階

どこをゴールにするかや、ステップの順番や数はこの通りでなくてもいいのですが、セックスを含む「性のふれあい」には段階があるということを意識することが大切です。

セイシルでは「ふれあいの12段階」を性知る記事「はじめてのセックス その前に。」で紹介しています。

 

ふれあいの12段階を用いたワーク

上記の「ふれあいの12段階」の画像を活用して、助産師の有馬祐子さんが素敵なワークを考案してくれました。このワークは、学芸大学附属世田谷中学校、谷百合香先生の授業実践を参考にしていて、今回はそのワークの内容と制作した教材を紹介します!

高校生向けと小学生向けにそれぞれ授業が行われました。

高校生に向けた実践「接触・ふれあいの同意についての学習」

まずは、都内の高校2年生に向けて行われたワークの紹介です(授業内容は全てではなく、省略している部分があります)。

授業実践の流れ

①個人ワーク

生徒一人ひとりに、「ふれあいの12段階」のうち8枚のカード( 「目から体」「目から目」「声から声」、 「手から手」「腕から肩」「腕から腰」、「手から頭」「手から体」)を配布。親しくなっていくにつれてふれあいはどのように進展していくか、生徒一人一人が考察して、ワークシートに記入しました。

②グループワーク

3〜4人のグループで、それぞれの考えを発表し合い、共通する箇所、異なる箇所について確認し合いました。その後、グループの考える 8つのふれあいの進展について考えをまとめる作業をしました。

③全体共有

6グループで作成したカードの順番を一つの場所に並べ、様々な考え方があることをクラス全体で共有しました。

④まとめ

デズモンド・モリスの『親密の12段階』の順番をホワイトボードで示して、参考として提示し、人が親しくなるのに受け入れられるふれあいの進み方(順番)というものは、一人一人が違うことを伝え、同じにしようとするものではない、ことを確認。

違うからこそ、良い関係性を持つためにはコミュニケーション、対話を持って同意をとることが大切になること、自分の考える順番を相手に同意なく求めることは、穏やかな関係性をこわす可能性があると伝えました。

この後、次の時間に「壁ドン」や「バックハグ」などについても考え、親密度の進展についてあらためてグループで話し合い、デートDVチェッカーを配布しました。

授業を受けた生徒の感想

最後に、生徒からの感想の一部を紹介します。

・人それぞれ考えや、嫌なことが違う。カードは対象の人を誰にするかで、結構結果が変わりました。誰かに触る時は、友達でもちゃんと考えたい。相手が嫌がることはしないようにしようと思いました。

・シチュエーションによって親しさの段階は変わっていくし、人によっては嫌がることや許せることなどが変わってくることがわかりました。自分の感情や気持ちだけで行動するのではなく、相手の反応や行動を見てからにしようと思いました。

・人によって順番がバラバラで、感じ方もそれぞれ違うことが分かった。自分はそこまで親しくなくてもできることでも、他の人からしたら親しくないとできないこともあって、自分が意見を強調しすぎないようにしようと思った。無理にすることも良くないし、断ることも大切。

・相手を異性とするのか、同性とするのか、そして他人としてできるのかなどでカードの並びは変わっていくだろうと思いました。自分がいいと思っていることでも、相手にとってそれは嫌なことかもしれない。だから人間関係は難しいんだなと思いました。

・今日の授業で、価値観がみんなばらばらだったことに驚きました。だけど、なぜこの順番にしたのか話し合ったりすると、相手の考えが分かったり、自分の気持ちを理解してもらえたりして、すごく楽しかったです。

・人によって、全然距離も感じ方も手段も違うということを、改めて確認することができました。私は距離が近くなってしまうので、苦手な人もいるということを頭に入れておきたいです。

・人それぞれ、親しさ段階の考え方が違って、考え方が違うと同時に、感じ方の違いも学びました。だから、自分が「いいでしょー」と思ってやったことが、相手にとって嫌なことの可能性もあるから、同意をしたうえでやったり、信頼し合える仲になった時など、自分のことも相手のことも、その立場に立って考えることが必要だと思いました。



小学生に向けた実践「ロイロノートを活用した学習」

次に、都内の小学5年生に向けて行われたワークの紹介です。

〈あなたが思う「親しくなっていくふれあいの順番」は?〉という質問に対して、ふれあい・親しさについて考察しながら、ふれあいの12段階の内8つのカードを、ロイロノートを使用してタブレット上で並べていきます。


カードには、ふれあいの行為をイメージしやすいように言葉を添えています。

【目から体】その人がいるとわかる

【目から目】おたがいに目が合う

【声から声】その人と言葉を交わす

【手から手】その人と手をつなぐ

【腕から肩】どちらかの人が、相手の肩に手をふれる

【腕から腰】どちらかの人が、相手の腰に手をふれる

【手から頭】おたがいに頭にふれる

【手から体】おたがいにだき合う

(有馬さんが、小学生にわかりやすい言葉を助産師の相賀佳代子さんと考えました。)

それらのカードを自分の生活の中で人とふれあう機会を思い起こしながら並べ、それぞれが考えた順番を教員に送信しました。

今回は、友人同士で意見交換をする場面は作らず、教員4名が作成した順番を生徒に見せながら次のことを子どもたちに伝えました。

「人の考えには違いがある」

「同じこともあるけれど、違う場合は相手の思いを確認できないでいるから、不愉快な気持ちにさせてしまうことがある」

「確認をとることは大切」

「いやな関わりやふれあいがあったら『いや』と言って、自分の気持ちを守っていい」

授業後には「くすぐられる嫌がらせを受けて困っている」と教員に伝えることができた児童が数人いたようです。

 

授業を受けた児童の感想

最後に児童からの感想の一部を紹介します。

・今回の授業で人と自分とでは触れ合うことに対する価値観が違うということがわかりました。自分より敏感な人に気をつけたり嫌そうな顔をしている時は引くようにするなどして今後の生活に役立てていければいいなと思います。

・今回の授業では、心や体を大事にすることが、とても大切なんだなと学ぶことができました。人は、それぞれ個人差があるということが、学びとなりました。
人の体に触れるときには、しっかり許可を得なければいけないということを、改めて実感できました。

・今日の授業では、友達との関わり方や心の発達の話など、いろいろなことを学ぶことができ、正しい知識を得られたので、よかったです。また、今日の授業で習ったことをこれからも大切にして、今後の生活に活かしていきたいです。

・今日は「やめて」といってもよいということが僕の心に残りました。

僕はいつも本当はやりたくないことを無理してやることが多かったが、「やめて」といってもよいと知ると心がすこし楽になりました。


実践を振り返って

授業を実践した有馬祐子さんよりコメントをいただきました。

ふれあいの行為をカードで表し、親しさの進展について考えさせる方法は、子どもたちにとって非常に分かりやすいと感じました。また、この学習を進める際には、ふれあいの対象が「親しい友達」なのか「恋愛対象」なのかを明確にすることで、子どもたちが課題に取り組みやすくなると思います。

「性的同意」をテーマとする授業を準備する場合、もし時間に余裕があるなら、まず今回のように性的接触を表すカードを使わず、ふれあいと同意について考察する機会を設けるのが良いでしょう。その上で、次の授業で「この行為が加わったらどのような影響があるか想像してみましょう」といった形で性感染症や妊娠の可能性に触れると、子どもたちにとって「性的同意」の理解がさらに深まるのではないかと思います。

授業の中で、「ふれあい」や「接触」に対して想像することが難しいと感じる生徒もいました。ある生徒からは、「このカードは全部使わなければいけないんですか?親しさが増したとしても、私は『嫌だ、してほしくない』というものがあるんですが、それでもいいですか?」という質問がありました。

このような場合には、「この8枚のカードを使って親しさが増していく段階を考えて並べてみましょう。ただし、すべてのカードを使用する必要はありません」といった説明をあらかじめ添えることで、子どもたちの困惑を和らげることができると考えます。


有馬さん、素敵な活用方法をご紹介いただき、ありがとうございました!

みなさんも「同意」の理解に繋げるためにも、ぜひ「ふれあいの12段階」をご活用ください♪


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