海外の性教育は日本とどう違う?国別に授業内容・教え方・学ぶ時期を比較
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海外の性教育は国や地域で異なる
UNESCOなどの世界調査では、調査対象155か国のうち85%に性教育に関する政策や法律があるとされていますが、その内容は国や地域によって大きく異なります。
たとえば、オランダやスウェーデンでは、性や人間関係、同意、多様性などを学校教育の中で扱う制度があります。
イングランドでは、小学校で「人間関係教育」、中等学校で「人間関係・性教育」が必修です。
一方、アメリカは州や学区によって内容が大きく異なり、全国で同じ性教育が行われているわけではありません。
台湾は、性教育そのものだけでなく、ジェンダー平等や学校での安全と結び付けて教えている点が特徴です。
日本でも、体の発育、思春期の変化、妊娠、性感染症、性暴力防止などは学校で扱われています。
ただし「性教育」という独立した教科があるわけではなく、保健体育、理科、家庭科、道徳、特別活動、「生命(いのち)の安全教育」※などに分かれて学ぶ形です。
日本と海外の性教育 比較表
まずは、日本と海外の性教育について、「いつから学ぶのか」「何を学ぶのか」「どう教えるのか」「授業時間はどう見えるのか」という同じ項目で比べてみましょう。
表を見ると、国によって違うのは「性教育をするかどうか」だけではなく、どの教科で扱うのか、どの年齢から始めるのか、同意や人間関係まで含めるのか、といった設計そのものだと分かります。
国別に見る海外の性教育
海外の性教育は、国ごとの法律やカリキュラムだけでなく、日本と同じように学校の方針や教師の専門性による違いがあります。
各国の公的な制度と具体的な実践例を分けながら、海外の性教育の特徴をより詳しく見ていきます。
オランダ:低年齢から「境界線」と「尊重」を学ぶ
オランダでは、学校で性や性的多様性について教えることが求められています。
子どもたちは、性的な違いや多様性を尊重すること、性暴力から自分を守ることなどを学びます。
低年齢の授業で中心になるのは、性交や避妊の詳しい説明ではなく、友達との関わり方、自分と相手の気持ち、体の境界線、「いや」と言われたら尊重することなどから始まります。
日本との差として大きいのは、体の仕組みだけでなく、セクシュアリティや多様性への尊重も学習目標に含まれている点です。
スウェーデン:性教育の中心に「同意」と「人間関係」がある
スウェーデンでは、1955年に学校での性教育が義務化されました。
2022年には、カリキュラム上の名称が「セクシュアリティ、同意、人間関係」に変わりました※。
名前からも分かるように、体や生殖だけでなく、同意、人間関係、ジェンダー平等、社会の中の規範なども扱います。
授業は1つの教科だけで完結するのではなく、複数の教科で繰り返し扱う設計です。
また、若者向けのユースクリニックでは、避妊、妊娠検査、性感染症、カウンセリングなどの相談に対応していて、学校で学んだ知識を、必要な支援につなげやすい仕組みがある点も特徴です。
イングランド:小学校は「人間関係」、中等学校で「性」へ広げる

イングランドでは、小学校で「人間関係教育」、中等学校で「人間関係・性教育」が必修です。
小学校では家族、友情、尊重、プライバシー、オンライン上の安全などを学び、中等学校では避妊、性感染症、性的同意、性的な圧力への対応などへ内容が広がります。
日本との差は、小学校の段階から「人間関係」を必修として扱う点です。
アメリカ:国ではなく州・地域で大きく違う

アメリカには、全国で統一された性教育カリキュラムはありません。
性教育を行うか、どの内容を必修にするか、医学的に正確な情報を求めるかは、州や地域によって異なります。
避妊や性感染症、性的同意、性的指向・性自認を扱う地域もあれば、禁欲を中心に教える地域もあります。
2025年時点で、36州とワシントンD.C.が性教育の実施を求めています※が、すべての州で同じ内容が教えられているわけではありません。
国全体で見たときの地域差が大きいので、「アメリカではこう教えている」と一言でまとめるのは特に難しい国です。
台湾:ジェンダー平等と学校の安全に結び付いている
台湾では、「ジェンダー平等教育法」によって、学校でジェンダー平等教育を行うことが定められています。
小学校・中学校では、毎学期4時間以上の関連授業や活動を行うことになっています。
内容には、ジェンダー平等、差別の防止、性自認や性的指向への尊重、学校での性暴力・セクハラ・いじめの防止などが含まれます。
日本との差は、性教育に近い内容が、ジェンダー平等や学校の安全を守る制度と結び付いている点です。
日本の性教育はどうなっている?
日本では、「性教育」という独立した教科はありません。
文部科学省は、児童生徒が性について正しく理解し、適切に行動できるように、保健体育を中心に、理科、家庭科、道徳、特別活動など学校教育全体で指導する方針を示しています。
小学校では、体の発育や思春期の変化、初経、精通、発毛などを学びます。
中学校では、生殖機能の成熟、受精、妊娠、性感染症などを扱います。
ただし、中学校の学習指導要領では、妊娠の経過は扱わないとされています。
これは「はどめ規定」と呼ばれることがあります。
参考:はどめ規定とは?
また、日本では「生命(いのち)の安全教育」も進められています。

これは、子どもたちが性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないために、自分と相手の心や体を大切にすることを学ぶ教育です。
教材は幼児期から高校、大学、一般向けまで用意されていますが、学校や地域の状況に応じて使われるので、どの学年で、どれくらいの時間をかけて、どの内容まで扱うかは学校によって差が出ます。
国際セクシュアリティ教育ガイダンスは「比較のものさし」
海外の性教育を比べるときの参考になるのが、UNESCOなどがまとめた「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」です。
このガイダンスは、各国に同じ授業を義務づけるものではなく、年齢や発達段階に応じて、どのような内容を学ぶとよいかを示した国際的な参考資料です。
体のことだけでなく、人間関係、同意、安全、健康、ジェンダー、人権なども学習内容に含まれます。
つまり、海外の性教育を見るときは、「制度があるか」だけでなく、「実際に何を、どの年齢で、どのように教えているか」を見る必要があります。

日本と海外の違いは「早さ」よりも「学び方」にある
海外の性教育は、日本より早く始まる国もありますが、低年齢から大人向けの内容を教えているわけではありません。
小さい子どもには、まず「自分の体は大切」「嫌なことは嫌と言っていい」「相手が嫌がることはしない」「困ったら信頼できる大人に話す」といった内容から始めます。
日本でも、体の発達、妊娠、性感染症、性暴力防止などは学校で学びます。
違いが出やすいのは、それらがどの学年で、どのくらいの時間をかけて、どのテーマと結び付けて教えられるかです。
海外の事例を見るときは、「どの国が進んでいるか」ではなく、「年齢に合った内容を、続けて学べるか」を見ると分かりやすくなります。




